Hiroは、歴史を読むためにまず「泊まる場所」を選んだ
歴史を学ぶ旅というと、多くの人は博物館や大聖堂や古い建物を思い浮かべる。もちろんそれは重要だ。だがHiroは、歴史を理解するには、朝と夜をその街で過ごすことのほうが先だと知っていた。どの建築の中で目を覚ますか。どの通りの灯りを見て部屋へ戻るか。その繰り返しのなかで、過去は単なる知識ではなく、空気として身体に入ってくる。
そこで彼が最初の拠点に選んだのは、フレンチ・クオーターの Hotel Monteleone だった。ロイヤル・ストリートに立つこの名門は、ニューオーリンズの歴史を「資料」としてではなく、「いまも続く都市の文法」として感じるのに向いている。外へ出れば、街路の曲がり方、鉄のバルコニー、店の奥行き、歩行の速度、そのどれもが歴史の延長であることがわかる。
ただ、Hiroは一つの宿で歴史を読み切ろうとはしない。ニューオーリンズの過去には、フレンチ・クオーターの濃密さだけではなく、セントチャールズ沿いの南部的な陰影や、川沿いの現代的な都市の表情も含まれている。だから彼は、歴史の異なる章を読むように、宿もまた少しずつ変えていく。街の中心を読む夜には Hotel Monteleone。より古典的な南部の気配に触れたいときには Pontchartrain Hotel や The Chloe。現在の都市のスケール感を見たいときには Four Seasons Hotel New Orleans。宿泊は、この州では単なる休息ではなく、歴史の入口になる。
ルイジアナ史は、征服の歴史である前に、混交の歴史でもある
ルイジアナの歴史を語るとき、最初に重要なのは「誰が最初にいたか」である。ヨーロッパ人が到来するより前から、この土地には先住の社会があり、水と湿地と川に適応した生活の知恵があった。つまりルイジアナは、植民地として始まったのではない。すでに名前のない豊かな世界のうえに、あとから帝国が乗ってきたのである。
その後、この地にはフランスの支配が入り、ついでスペインの統治が重なり、さらにアメリカ合衆国の一部となっていく。面白いのは、そのたびに以前の層が完全には消えなかったことだ。都市の区画、法律、宗教、食、言葉、家族のあり方。どれも一つの系譜だけでは説明できない。ルイジアナが他のアメリカ都市と違って見えるのは、この「消えきらなかった層」が街の中にいまも残っているからである。